障害者の任意後見制度とは?
~親亡き後を見据えた安心の仕組み~
はじめに
「親として、障害のある子どもが将来どうやって暮らしていけるのかが一番の不安です」
障害者のご家族から、私たち行政書士が最も多く耳にする言葉のひとつです。
実際、厚生労働省の調査でも「親亡き後問題」は全国的に大きな課題とされています。
その備えとして注目されるのが 任意後見制度 です。
成年後見制度に比べるとまだ利用は少ないですが、「本人の意思を尊重しながら将来に備える」点で、障害者のご家庭にとって有力な選択肢となります。
成年後見制度との違い
まず整理しておきたいのが、家庭裁判所が選任する 成年後見制度 との違いです。
- 成年後見制度(法定後見)
→ 判断能力が低下してから、家庭裁判所が後見人を選ぶ。
→ すでに意思能力がない人でも利用可能。
→ 裁判所の監督が強く、柔軟性に乏しい。 - 任意後見制度
→ 判断能力があるうちに、本人が「将来お願いしたい人」と契約を結ぶ。
→ 契約内容を自由に決められる(財産管理、医療手続き、生活支援など)。
→ 効力は、後に裁判所が任意後見監督人を選任した時点から発生。
障害者の方の場合、 本人に意思能力があるかどうか が制度選択の分かれ目になります。
障害者が任意後見を利用できるケース
障害があっても、本人に 契約内容を理解できるだけの判断能力 があれば、任意後見契約を結ぶことができます。
例:
- 知的障害が軽度で、自分の財産や生活のことを理解できる
- 発達障害があっても、支援者の説明で契約の意味を理解できる
- 精神障害があるが、安定していて意思表示が可能
この場合、本人の意思に基づいて後見人を選ぶことができ、将来に備えられます。
利用が難しいケース
一方で、次のような場合は任意後見は難しくなります。
- 本人が契約の意味を理解できない
- 公証人の面談で「意思能力がない」と判断された
この場合は 家庭裁判所に法定後見を申し立てる しかありません。
親亡き後を見据えた工夫
障害者家庭で任意後見を検討する場合、次のような工夫が実務上多いです。
- 親自身の任意後見契約
- 親が自分の財産管理を第三者に任せる契約をしておくことで、老後の安心を確保。
- 子の任意後見契約(可能なら)
- 子が契約を理解できるうちに、信頼できる人を後見受任者として契約。
- 信託や死後事務委任契約との組み合わせ
- 親亡き後の財産管理を信託で担保し、葬儀・納骨などを死後事務委任で確保。
こうした「複数の仕組みの組み合わせ」が、障害者家庭の実務では一般的です。
行政書士ができる支援
任意後見契約は 公証役場で公正証書を作成する 必要があり、専門的な知識が欠かせません。
行政書士は以下の支援が可能です。
- 任意後見契約の文案作成サポート
- 財産目録・生活設計の作成
- 見守り契約や死後事務委任契約とのパッケージ提案
- 家族や支援者への説明と合意形成の支援
まとめ
任意後見制度はまだ利用件数が少ないですが、
障害者とその家族にとっては「本人の意思を尊重しながら将来に備える」ための貴重な制度です。
- 判断能力があれば契約可能
- 本人の希望する人を後見人にできる
- 信託や死後事務委任と組み合わせることで「親亡き後問題」に対応可能
ご家族の不安を軽減し、安心できる生活をつくるためにも、早めの準備が重要です。
👉 行政書士法人檀上事務所では、障害者家庭向けの任意後見・見守り契約・死後事務委任契約をトータルでサポートしています。
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