その民泊、本当に「届出だけ」で始められますか?
― 民泊には“高難易度案件”という別物があります ―
民泊について調べていると、
「届出を出せば始められる」
「書類をそろえるだけ」
という説明をよく目にします。
確かに、そういう民泊も存在します。
しかし一方で、
同じ“民泊”という言葉で語られていながら、
難易度がまったく異なる案件があることは、あまり知られていません。
民泊は、実は二種類あります
民泊の手続きは、実務上はっきり二つに分かれます。
- 問題なく届出・申請が進む民泊
- 途中で止まり、計画そのものを見直す必要が出る民泊
後者が、いわゆる**「高難易度案件」**です。
これは珍しいケースではありません。
一定の条件が重なると、誰にでも起こり得るものです。
こんな条件が一つでも当てはまりませんか?
建物について
- 築年数が古い
- 増築・改修を繰り返している
- ロフト・吹き抜け・用途不明なスペースがある
- 住宅以外として使われていた履歴がある
→ この時点で、建築基準法上の検討が必要になる可能性があります。
消防について
- 宿泊者が不特定多数になる
- 2階以上に客室がある
- 木造建築である
- 延べ床面積が一定以上ある
→
「火災報知器を付ければ終わり」
では済まないケースが多く、
消防との事前協議が必須になることがあります。
立地・周辺環境について
- 用途地域が住宅系である
- 学校・保育所・病院が近い
- 景観地区・文化財エリアに該当する
- 自治体独自の民泊条例がある
→ 条例は自治体ごとに運用が異なり、
ネット情報がそのまま当てはまらないことも少なくありません。
工事・現場が絡む場合
- 改修工事が必要
- 足場を組む必要がある
- 工事車両が道路を使用する
- 近隣への説明が必要
→
この段階で、
「書類作成」ではなく「調整・段取り」の世界に入ります。
高難易度案件の本当の怖さ
高難易度民泊の怖さは、
途中まで進んでから止まることです。
- 工事が進んだ後で指摘が入る
- 消防検査直前で要件が変わる
- 許可が下りない理由が複合的で、誰も即答できない
このとき問題になるのは、
「誰のせいか」ではありません。
**「最初に難易度を見誤ったこと」**です。
高難易度案件は、最初の判断がすべてです
高難易度民泊では、
- 進めるべきか
- 設計を変えるべきか
- そもそもこの物件でやるべきか
という事業判断そのものが問われます。
ここを誤ると、
あとから挽回するのは極めて困難です。
相談の段階で、ぜひ確認してほしいこと
もしあなたの民泊計画が、
- 「少し不安がある」
- 「ネット情報だけでは判断できない」
- 「役所に聞いたら話が広がった」
こうした状態であれば、
その案件はすでに高難易度の入口に立っています。
私たちが最初に見るのは「可否」ではありません
行政書士法人檀上事務所では、
民泊の相談を受ける際、
- 書類が作れるか
ではなく、 - その計画が現実的か
- 途中で止まらないか
- 行政対応として整理できるか
という視点から全体を確認します。
場合によっては、
「今は進めない方がいい」
という結論になることもあります。
それも含めて、
高難易度案件の整理だと考えています。
まとめ|民泊は「難易度を見抜くこと」から始まります
民泊は、
始めることよりも、
正しく始めることの方が難しい事業です。
もしあなたの計画が、
- 少し複雑そうだ
- 関係する法律が多そうだ
- 行政とのやり取りが増えそうだ
そう感じた時点で、
それはもう簡単な民泊ではありません。
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