旅館業申請における「水質汚濁防止法」に関する手続きとは
~簡易宿所・旅館・ホテル開業前に押さえるべき環境法令~
旅館業の許可申請を行う際、意外と見落とされがちなものに「水質汚濁防止法」に基づく手続きがあります。
特に、下水道未整備区域や浄化槽を設置して排水処理を行う地域では、この法令に関する届出が保健所の審査項目に含まれています。
1. 水質汚濁防止法の目的と旅館業との関係
水質汚濁防止法は、工場・事業場からの排水により公共用水域(河川・海域など)が汚染されることを防ぐ目的で制定された法律です。
旅館業施設(簡易宿所・ホテル・ゲストハウス等)も「特定施設」に該当する場合があり、
浄化槽・厨房排水・風呂・洗濯排水などの設備が設けられている場合には、
「特定施設設置届出書」の提出が必要になるケースがあります。
2. 尾道市・福山市での扱いの違い
尾道市の場合
- 下水道未整備区域が市内各地に残っており、旅館業の新設や改修時に浄化槽を設置する場合は、水質汚濁防止法に基づく届出が必要です。
- 提出先は尾道市環境政策課。
- 旅館業許可申請書の副本に、「浄化槽設置届」または「特定施設設置届出書」を添付するよう保健所から指導されます。
福山市の場合
- 多くの地域で下水道が整備されていますが、農村部・山間部・島しょ部では浄化槽を使用する施設もあります。
- 環境保全課への事前確認が求められ、状況によっては排水経路図や放流先の位置図の提出を求められます。
3. 対象となる主な「特定施設」
| 区分 | 設備例 | 届出の要否 |
|---|---|---|
| 浴場施設 | 大浴場・家族風呂など | 要届出(循環式含む) |
| 厨房 | 調理場の排水設備 | 要届出(油脂・洗剤系排水) |
| 洗濯施設 | シーツ・タオル洗いなど | 要届出 |
| トイレ・風呂 | 浄化槽設置の場合 | 浄化槽設置届出が必要 |
これらの設備が複合する旅館・簡易宿所では、環境法令上「生活排水」として扱われる一方、
一定規模を超えると「特定事業場」として扱われ、届出が求められます。
4. 届出書の提出先と添付書類
提出先
- 尾道市:環境政策課(尾道市役所本庁4階)
- 福山市:環境保全課(市役所9階)
添付書類(例)
- 位置図(住宅地図レベル)
- 排水経路図(放流先まで明記)
- 設備仕様書(浴槽・厨房・浄化槽の構造が分かる図)
- 使用水量・排水量の概算表
- 申請者(事業者)印鑑
※ 尾道市の場合、「特定施設設置届出書」または「浄化槽設置届」を提出後、受理通知書の写しを旅館業申請書に添付します。
5. 旅館業許可申請との関係(申請フロー)
- 物件の現況確認(用途地域・建築基準法・消防法等)
- 水質汚濁防止法の該当確認(下水道整備状況・排水経路確認)
- 環境政策課への届出(必要に応じて)
- 保健所へ旅館業許可申請書提出(届出副本添付)
- 施設完成後の現地検査・許可
6. よくある質問
Q. 下水道に接続している場合も届出が必要ですか?
→ 原則として公共下水道に直接排水する場合は届出不要ですが、
排水経路や下水道接続状況を確認できる書類(接続証明書・排水経路図など)の添付が必要です。
下水道に接続していない場合(浄化槽・側溝放流など)は、水質汚濁防止法に基づく届出が必要です。
Q. 家庭用規模(小規模宿泊施設)でも届出が必要?
→ 規模にかかわらず、浴場や厨房など特定施設を設ける場合は届出対象になります。
Q. どこに相談すればよいですか?
→ まずは旅館業の事前相談時に保健所で確認し、そのうえで環境政策課・浄化槽担当課へ確認を行います。
7. 行政書士がサポートできる内容
行政書士法人檀上事務所では、旅館業・簡易宿所申請に伴う水質汚濁防止法関連手続きについてもワンストップで対応しています。
- 浄化槽設置届出書・特定施設設置届出書の作成
- 位置図・排水経路図の作成補助
- 尾道市・福山市役所への提出代行
- 旅館業許可申請書への添付整理
- 工事業者・浄化槽業者との調整
8. まとめ
旅館業許可の審査では、「建築基準法」「消防法」「旅館業法」だけでなく、**環境法令(水質汚濁防止法)**も密接に関係しています。
特に尾道市のように下水道未整備区域が残る地域では、届出の有無が許可申請の進行を左右することもあります。
旅館業の開業をお考えの方は、用途地域・排水経路・浄化槽設置計画を含めた総合調査を早期に行うことが重要です。
行政書士法人檀上事務所では、環境法令・消防法・建築法を横断した包括的なサポートを提供しています。
行政書士法人檀上事務所
旅館業・民泊・簡易宿所・住宅宿泊事業に関する許可申請サポート
所在地:広島県福山市高西町南37番地
お問い合わせ:https://kyoka-shutoku.com
