180日民泊から365日民泊へ ― 住宅宿泊事業法から旅館業(簡易宿所営業)へのステップアップ解説 ―|福山市の行政書士法人檀上事務所

180日民泊から365日民泊へ

住宅宿泊事業法から旅館業(簡易宿所営業)へのステップアップ解説

民泊を始めて半年、
「もっと長期的に運営したい」「年間を通して予約を受けたい」
そんな声を多く聞くようになりました。

住宅宿泊事業法(いわゆる“180日民泊”)での営業は、1年のうち180日までという厳しい日数制限があります。
一方、旅館業法に基づく「簡易宿所営業」を取得すれば、365日営業が可能になります。

この記事では、実際に「180日民泊」から「365日民泊」へと切り替えるための実務的ステップを、行政手続き・建築・消防・保健所の観点から詳しく解説します。


なぜ180日制限があるのか

住宅宿泊事業法(平成30年施行)は、個人が空き家や自宅を活用して短期宿泊を行うことを可能にした制度です。
ただし、住宅地における近隣トラブルの懸念や旅館業とのバランスを取るため、年間180日以内の営業制限が設けられています。

そのため、稼働率が高いエリア(尾道・倉敷・京都など)では、180日を超える需要に応じられず、事業としての採算が取りにくいケースも少なくありません。


365日営業するための選択肢:「簡易宿所営業」

旅館業法には以下の4区分があります。
その中で民泊が移行しやすいのが「簡易宿所営業」です。

区分 対象施設 主な特徴
ホテル営業 ビジネスホテル・リゾートホテル等 全面サービス型
旅館営業 旅館・民宿 接客・食事提供あり
簡易宿所営業 ゲストハウス・ホステル・大型民泊等 素泊まり中心・共用施設型
下宿営業 長期滞在型(1か月超) 下宿人との生活共用

簡易宿所は、食事提供不要・管理者常駐不要・比較的緩やかな構造基準で、
180日民泊の延長線上にある営業形態といえます。


住宅宿泊事業から簡易宿所営業への切り替え手続き

現況確認・用途地域チェック

まず、物件の所在地が旅館業法上の用途地域で営業可能かを確認します。
尾道市・福山市では「第一種低層住居専用地域」などは不可となる場合があります。
建築基準法・都市計画法の用途地域マップで確認が必要です。

建築基準法上の用途変更

多くの住宅は「一戸建ての住宅(専用住宅)」として確認申請が出ています。
これを「簡易宿所(旅館)」に用途変更するには、建築士による確認申請または確認不要証明書の取得が必要です。

  • 延床200㎡以下 → 確認不要証明で対応できる場合あり
  • 延床200㎡超 → 用途変更の確認申請が必要

消防法令適合手続き

住宅宿泊事業では緩和されていた消防設備も、旅館業では原則として自動火災報知設備・誘導灯・非常照明・避難経路図が必須になります。
深安消防署・尾道消防局など、所轄消防と事前協議を行い「消防法令適合通知書」を取得します。

保健所への旅館業申請

構造・設備が整った段階で、保健所に「旅館業(簡易宿所)営業許可申請」を提出します。
申請から検査・許可交付まではおおむね3~4週間程度が標準処理期間です。

必要書類の例:

  • 営業許可申請書
  • 平面図・立面図・求積図・給排水経路図
  • 管理者(世話人)一覧
  • 消防法令適合通知書
  • 建築確認関係書類
  • 水質汚濁防止法関係書類(浄化槽使用地域のみ)

180日民泊からの切り替えに伴う注意点

  1. 住宅宿泊事業の廃止届
    旅館業許可を取得した場合は、住宅宿泊事業としての届出を廃止する必要があります。
  2. 構造変更の必要性
    宿泊室の面積基準(33㎡以上または宿泊者1人あたり3.3㎡)を満たしているか確認。
    共用部分(洗面・浴室・トイレ等)の数も審査対象です。
  3. 管理者・世話人の配置
    簡易宿所営業では、常駐不要ですが、緊急時対応可能な管理体制を示す必要があります。
    民泊管理会社との契約書で代替可能です。
  4. 無人運営の場合の対応
    無人チェックインを行う場合、フロント設備・管理システム・監視カメラ・リモート通話設備等の構造要件を満たす必要があります。
    尾道市や広島県では無人運営の可否を個別判断するため、事前相談が重要です。

費用の目安(行政書士・建築士・消防設備士連携)

項目 内容 目安費用(税込)
用途変更確認申請 建築士対応(図面・説明書類) 約11~16万円
消防法令適合通知申請 消防設備士による設計・申請 約3~5万円
旅館業簡易宿所営業申請 行政書士による申請一式 約17~20万円
図面作成 平面・立面・給排水図等 約5万円
合計 (設備追加費用別途) 約35~45万円程度

※尾道市・福山市・府中市など保健所管轄により多少異なります。


尾道・福山での現場実例

実際に行政書士法人檀上事務所が対応したケースでは、

  • 築40年の木造住宅をリフォームして旅館業へ切り替え
  • 消防設備追加(熱感知器・避難経路図)+用途変更不要証明
  • 許可まで約1.5か月
    というスムーズな事例もあります。

一方で、窓の開放が困難な無窓階判定2階の避難経路確保で設計変更を求められた事例もあり、
専門士業との連携が不可欠です。


まとめ:180日民泊から365日民泊へは「行政・建築・消防」三位一体で

180日民泊の収益性を超え、年間を通じて運営できる「365日民泊(簡易宿所)」は、
もはや個人事業レベルでも十分に現実的な選択肢です。

しかし、法令上の切り替えには「建築確認」「消防法」「旅館業法」という三つの法律が絡み、
各所との調整が必要不可欠です。


ご相談・申請代行について

行政書士法人檀上事務所では、

  • 現地調査・用途地域確認
  • 建築士・消防設備士との連携
  • 旅館業申請書類一式の作成・代理提出
  • 無人運営・管理会社契約書の整備
    までワンストップで対応いたします。

尾道市・福山市・府中市・三原市・倉敷市エリアで
「180日民泊から365日民泊へ移行したい」とお考えの方は、
まずはお気軽にご相談ください。

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