【第3弾】複合災害BCP ― 自然災害と感染症が同時に起こったら|福山市の行政書士法人檀上事務所

【第3弾】複合災害BCP ― 自然災害と感染症が同時に起こったら

執筆:行政書士法人檀上事務所


■ はじめに

自然災害は単体で発生するとは限りません。
たとえば、地震の後に避難所で感染症が発生したり、台風による停電中にインフルエンザが流行するなど、複合的な災害が現場を襲うことがあります。

障害福祉サービス事業所では、複合災害が起きると支援の難易度が大幅に上がり、利用者・職員双方の安全確保とサービス継続の両立がより困難になります。
そこで重要になるのが、**複合災害を想定したBCP(複合災害BCP)**です。


■ 複合災害BCPの目的

複合災害BCPの目的は、

  • 重なり合うリスクの中で最優先すべき行動を明確にする
  • 限られた資源で最大限の安全を確保する
    ことにあります。

災害が複数同時に発生すると、既存の単独BCPだけでは対応が不十分になるため、事前のシナリオづくりが不可欠です。


■ 複合災害BCPに盛り込むべき視点

1. 感染対策を伴う避難行動

  • 避難所や拠点にもマスク・消毒液・防護具を常備
  • 換気や距離確保が可能な避難場所の確保
  • 家族が迎えに来られない場合の一時滞在体制

2. 支援の優先順位設定

  • 職員不足時に支援が必要な利用者を優先順位で整理
  • 医療的ケアが必要な方、一人暮らしの方などを優先支援対象に指定
  • 家族や後見人との事前合意をもとに緊急時対応を明文化

3. 複数BCPの統合管理

  • 自然災害BCPと感染症BCPを一体化
  • 「災害+感染症」など同時発生ケースの手順をシナリオ化
  • 職員が迷わず使えるよう動線別マニュアルを作成

4. 心理的支援の準備

  • 複合災害時は混乱や不安が高まりやすいため、視覚支援ツールや落ち着いた声かけを用意
  • 感情の高ぶりに配慮し、環境を安定させる工夫を事前に準備

■ 現場でよく聞かれる課題

  • 「避難訓練はしているが、感染症流行下での避難は未経験」
  • 「複合災害の想定がBCPに反映されていない」
  • 「マニュアルが分散していて、緊急時に探せない」

■ おわりに

複合災害BCPは、あらゆる状況を網羅する完璧な計画ではありません。
しかし、「何を守るか、何を優先するか」という判断軸をあらかじめ共有しておくことで、混乱を大きく減らすことができます。

障害のある方々にとって事業所は安心の拠点です。
日常から複合災害を想定した訓練と見直しを行い、職員全員で対応の引き出しを増やしておくことが、命と生活を守る力につながります。


本シリーズの【前編】では「自然災害BCP」、【後編】では「感染症BCP」について解説しています。合わせてご参照ください。


 

PAGE TOP