株式の相続が発生した場合における売渡請求手続きの全体像|行政書士法人檀上事務所

株式の相続が発生した場合における売渡請求手続きの全体像

株式を保有する会社において、株主が亡くなった場合、その株式は相続人に承継されます。しかし、会社としては相続人が必ずしも適切な株主であるとは限らないと考えることがあるでしょう。そうした場合、会社法第176条に基づき、会社は相続人に対して株式の売渡請求を行うことができます。

売渡請求の手続きは、法的にも手続き的にも非常に重要なプロセスであり、これを正確に行うことは、会社の安定運営を確保するために欠かせません。以下では、売渡請求手続きの全体像を詳細に解説します。

株式売り渡し請求と売買価格の決定に関する手続きの流れ

株式の売り渡し請求は、譲渡制限株式を保有する株式会社が、相続や一般承継などで株式を取得した者に対して、株式を売り渡すよう請求できる制度です。この手続きは会社法第174条から第177条に基づき規定されています。本記事では、株式売り渡し請求とその後の売買価格の決定について、具体的な流れを解説します。


1. 定款による規定

最初に、株式会社が株式売り渡し請求を行うためには、定款でその旨を明記している必要があります。具体的には、以下のような定款の規定が必要です。

「当社の株式を相続または一般承継により取得した者に対し、当社にその株式を売り渡すことを請求することができる。」

この定款の規定がなければ、株式売り渡し請求を行うことはできません。


2. 売り渡し請求の決定(会社法第175条)

次に、定款に規定がある場合、株式会社は株式売り渡し請求を行うために、株主総会の議決を経る必要があります。この際、請求の内容を決定するためには以下の要件が求められます。

  • 株主総会の特別決議が必要(定足数や議決要件を満たすこと)。
  • 売り渡し請求に関する具体的な事項を議案として提出。

また、株式を売り渡し請求される株主は、この議決において議決権を行使できない点に注意が必要です。


3. 売り渡し請求の通知(会社法第176条)

株主総会での議決を経た後、会社は株式を取得した者に対し、売り渡し請求の通知を行います。この通知には以下の事項を含める必要があります。

  • 売り渡し請求の理由
  • 売り渡し請求の対象株式
  • 売り渡し請求のスケジュール

通知後、売り渡しを受ける者は一定期間内に対応する必要があります。


4. 売買価格の決定(会社法第177条)

売り渡し請求が行われた場合、株式の売買価格を決定する手続きに移ります。この流れは以下のように進行します。

① 株式会社または株主による価格の合意

まず、株式会社と株式を売り渡す者(相続人等)が売買価格について合意を試みます。合意が成立した場合、そこで価格は確定します。

② 裁判所への申立て

もし合意が成立しない場合、株式会社または株式を売り渡す者は、売り渡し請求の日から20日以内に裁判所に対して売買価格の決定を申し立てる必要があります。この期間を過ぎると請求権が失効する可能性があるため注意が必要です。

③ 裁判所による価格決定

裁判所は、売り渡し請求に係る株式の公正な価格を決定します。裁判所が価格を決定した場合、その価格に基づき売買が成立します。


5. 売買手続きの実施

最終的に売買価格が決定したら、会社と株式保有者の間で売買手続きを行います。この手続きは、決定された価格に基づいて株式を会社が取得することで完了します。


注意点

  • 20日間の申立て期限:裁判所への売買価格の申立て期限は厳格に規定されています。この期限を過ぎると、売り渡し請求そのものが無効となる可能性があるため、速やかな対応が求められます。
  • 相続時の対応:特に相続などで株式を取得した場合、相続人間での調整も含めて慎重に対応する必要があります。

株式売り渡し請求を行う際のポイント

  1. 定款の整備:売り渡し請求を円滑に進めるためには、事前に定款で規定しておくことが重要です。
  2. スムーズな議案決議:株主総会での議決がスムーズに行えるよう、事前の準備を徹底しましょう。
  3. 専門家の活用:売買価格の交渉や裁判所への申立て手続きについては、弁護士や行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。

おわりに

株式売り渡し請求とその後の売買価格の決定手続きは、会社法の厳格な規定に基づいて進める必要があります。特に期限や定款の内容、裁判所への申立てなど、慎重に対応しなければならないポイントが多くあります。これらの手続きについて不明点がある場合は、専門家に相談して適切に対応することが重要です。

緊急性を踏まえたメッセージ

もし、相続によって株式が承継された場合、売渡請求手続きには早急に着手することが必要です。この手続きは、会社の経営を守るために極めて重要なものであり、相続人が新たな株主として不適切であると判断される場合には、早期に対応することが求められます。特に売渡請求には1年という期限があるため、この期間を過ぎることなく、迅速な手続きが必要です。

会社の未来を守るためにも、相続が発生した際には、まずは専門家に相談し、適切な対応を取りましょう。私たちの専門家チームが、売渡請求手続きをサポートし、貴社の安定した経営をお手伝いします。今すぐご相談ください。

会社法における相続人に対する株式の売渡請求手続きのロードマップは、以下の手順に基づいて行われます。

1. 株主総会の特別決議

  • 手続き概要: まず、相続人に対する売渡請求を行うためには、株主総会で特別決議を行う必要があります。
  • 必要事項:
    • 株主総会の招集通知(株主に対して、会議の少なくとも2週間前に通知する必要があります)
    • 議案の内容(売渡請求の内容を明確に記載)
    • 特別決議の成立要件(議決権の3分の2以上の賛成が必要)

2. 売渡請求の通知

  • 手続き概要: 特別決議が成立した後、相続人に対して、売渡請求を行う旨を通知します。
  • 必要事項:
    • 通知内容(売渡請求の根拠、株式の買取価格、売渡の期限)
    • 通知方法(通常は書面による通知)

3. 買取価格の決定

  • 手続き概要: 相続人に対する株式の買取価格を決定します。この価格は、会社法の規定に基づき、公正な評価が求められます。
  • 必要事項:
    • 買取価格の算定方法(純資産価額法、市場価格法など)
    • 専門家の意見(必要に応じて、会計士や鑑定士の意見を取得)

4. 相続人との交渉

  • 手続き概要: 売渡請求に基づく株式の買取に関して、相続人との交渉を行います。相続人が請求に応じるかどうかを確認します。
  • 必要事項:
    • 交渉の記録(会議録や書面によるやり取りの記録)
    • 合意内容(買取価格、支払方法、売渡期限)

5. 株式の譲渡と支払い

  • 手続き概要: 相続人が売渡請求に応じた場合、株式の譲渡手続きと代金の支払いを行います。
  • 必要事項:
    • 株式譲渡の書類(譲渡契約書など)
    • 代金の支払い方法(銀行振込、現金など)

6. 株式の名義書換

  • 手続き概要: 株式が会社に譲渡された後、会社の株主名簿において名義書換を行います。
  • 必要事項:
    • 株主名簿の更新(相続人から会社への名義書換)
    • 法務局への届出(必要に応じて)

7. 手続き完了の通知

  • 手続き概要: 株式の譲渡および支払い手続きが完了したことを相続人に通知します。
  • 必要事項:
    • 手続き完了通知書の作成
    • 手続きに関する記録の保管

このロードマップを基に、会社は円滑に売渡請求手続きを進めることができます。必要に応じて、専門家(弁護士や行政書士)の助言を受けることも検討してください。

「行政書士法人檀上事務所」では、相続人に対する株式の売渡請求手続きを迅速かつ的確にサポートしています。相続に伴う株式の売渡請求は、1年以内に行う必要があり、この期限を過ぎると会社としての権利を失ってしまいます。迅速な対応が求められるため、相続が発生した際はすぐにご相談ください。

行政書士法人檀上事務所は、広島県を中心に、相続や会社法に関連する各種手続きを専門に扱っています。お問い合わせやご相談は、以下の連絡先までお気軽にどうぞ。

行政書士法人檀上事務所

  • 住所: 〒729-0103 広島県福山市高西町南37
  • 電話番号: 084-934-2005
  • メール: officedanjotomohiko@gmail.com

私たちのチームが、貴社の経営を守るための最適なサポートを提供します。迅速な対応が必要な場合、まずはお電話やメールにてお問い合わせください。

お問い合わせ


     

    PAGE TOP