福祉事業における「送迎」と法的リスク
― 介護タクシーと自家用自動車有償運送許可の活用 ―
1. はじめに:福祉現場で高まる「送迎ニーズ」
障害福祉サービスや介護事業の現場では、利用者の通院や外出に伴う「移動支援」のニーズが高まっています。
しかし、事業所の白ナンバー車を安易に利用すると「白タク行為」として道路運送法違反に問われる可能性があります。
その解決策として注目されるのが、介護タクシーの導入と自家用自動車有償運送許可(ぶら下がり許可)です。
2. 白ナンバー車でできることの限界
- 無償送迎の範囲:施設⇄自宅、施設⇄最寄駅程度
- できないこと:
- 病院送迎の常態化
- 外出支援での車両利用
- 名目を変えて実質的に料金を取ること
この限界を超えた運用は「白タク」とされ、3年以下の懲役または300万円以下の罰金という厳しい罰則が科されます。
3. 介護タクシー(一般乗用旅客自動車運送事業)
特徴
- 緑ナンバー車を使い、国土交通省の許可を受けて運行
- 運賃メーターを備え、利用者は運賃を支払う
- ヘルパーが同乗し、車内介助・降車介助を行える
メリット
- 法的に安定した運行が可能
- 事業化できるため、収益モデルに乗せやすい
- 医療機関や施設と連携した送迎が可能
デメリット
- 許可要件が厳格(営業区域・車両設備・資格者配置)
- 許可取得までに時間とコストがかかる
4. 自家用自動車有償運送許可(ぶら下がり許可)
制度の概要
- 本来は訪問介護や居宅サービスを提供している事業所が、利用者の輸送も補助的に行うことを認める制度
- 自家用車(白ナンバー)を有償で運行できる特例
- 許可は「利用者の通院や必要な移動」に限り、運輸局の管轄で付与される
メリット
- 比較的導入しやすく、既存事業所に「送迎サービス」を追加できる
- 介護報酬とは別に輸送収入が得られる
- 利用者にとって利便性が高まる
デメリット
- あくまで「限定的な許可」であり、自由な送迎は不可
- 申請には事業計画・運行管理体制・安全対策の整備が必要
- 市町村の協議を経て認められるケースもあるため、地域差がある
5. 実務での選択肢と使い分け
- 介護タクシーを導入:
→ 外部への送迎を本格的に事業化したい事業者に向く - ぶら下がり許可を取得:
→ 訪問介護・居宅介護にプラスアルファで送迎対応したい事業者に向く
どちらも「利用者の移動を支える」有効な制度ですが、目的と規模に応じて選択が必要です。
6. 行政対応と監査リスクへの備え
- 契約書や運営規程に「送迎ルール」を明記する
- 職員研修で「白タク禁止」を徹底する
- 違反事例が報道されると地域の信頼にも直結するため、合法的な仕組みを必ず整備することが経営の安定に直結します。
7. まとめ
- 白ナンバー車の送迎は「施設⇄自宅」などに限られ、それ以外は白タク行為のリスク
- 合法的に移動を支援するには、
- 介護タクシーの導入(緑ナンバー)
- 自家用自動車有償運送許可(ぶら下がり許可)の取得
- 利用者ニーズや事業規模に応じて選択することが重要
専門家からのご案内
行政書士法人檀上事務所では、
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「白タクのリスクをなくしたい」「送迎を事業の強みにしたい」とお考えの事業者様は、ぜひお気軽にご相談ください。