【第5回】運行管理者と整備管理者の選任とは?〜運送業の許可に必須の「2人」をどう確保するか〜
こんにちは、行政書士法人檀上事務所です。
運送業を始めるための要件として、**必ず確保しなければならない“2人の管理者”**がいます。
それが、「運行管理者」と「整備管理者」です。
今回は、この2人の役割・選任要件・実務対応について、許可申請の現場での事例も交えて解説していきます。
運行管理者とは?〜安全運行の司令塔〜
運行管理者は、トラックの運行全般を安全に行うための管理責任者です。
道路運送法により、営業所ごとに1名以上の選任が義務付けられています。
主な業務:
- 点呼(運行前後の体調確認・酒気帯び確認)
- 運転者の労働時間・休息の管理
- 運行日報の管理
- 運転者への安全教育
選任要件:
- 運行管理者資格証の保有者(国家試験合格者)
- または、実務経験5年以上+基礎講習修了者(1回)+一般講習修了者(4回)
整備管理者とは?〜車両整備の番人〜
整備管理者は、事業用車両の整備計画や点検実施を担う役職です。
車両が5台以上の場合、営業所単位で1名の選任が求められます。
主な業務:
- 車両の点検・整備計画の立案
- 整備記録簿の管理
- 整備業者との連絡・調整
- 故障時の対応指示
選任要件:
- 整備の管理を行おうとする自動車と同種類の自動車の点検若しくは整備又
は整備の管理に関する2年以上の実務経験を有し、かつ、地方運輸局長が行
う研修を修了した者であること - または、一級、二級または三級の自動車整備士技能検定に合格した者であること
外部委託や“名義貸し”はできるのか?
「管理者なんて外部にお願いすればいいんでしょ?」
――これは多くの方が陥りがちな誤解です。
❌ 原則として「常勤の従業員」でなければ不可
- パートタイムでも勤務時間が十分であれば可
- 他の法人との兼任・掛け持ちはNG(原則)
❌ 名義貸し・報酬だけ渡して名義だけ使うのは違法
- 運輸局の調査で発覚すると許可取消や業務停止も
どうしても該当者がいない場合は、専属で雇用契約を結ぶ・役員就任させるなどの方法で体制を整える必要があります。
管理者の資格がない場合の“裏技”は?
「今すぐ該当資格者を確保できない…」というケースも少なくありません。
そのような場合でも、以下の方法で対応できる可能性があります。
✅ 試験合格を待つ(運行管理者試験は年2回)
- 国家試験は年2回(3月・8月)実施
- 合格後、運行管理者証が交付されれば選任可能
✅ 実務経験を証明して講習を受ける
- 一定期間、他の運送会社で運行補助業務に関わった記録があればOK
- 雇用契約書や勤務記録をもとに申請可能
✅ 整備管理者は「委託整備事業所の整備主任」を登用できる場合あり
- ただし、事業所専属であることを証明する必要あり
行政書士からのコメント:人選は「事前相談」の段階で確定を
管理者の確保は、許可申請の“最初のハードル”であり、“最初の落とし穴”でもあります。
- 実務経験の証明が不十分で差戻し
- 資格者が他社と兼任していたため却下
- 提出時に就任承諾書が未提出で審査中断
こうしたトラブルを防ぐため、当事務所では事前相談の段階で履歴書・資格証・就任予定表を確認し、受任後すぐに提出書類化します。
特に「管理者が急遽辞退した」といった事態もあり得ますので、バックアップ人材の確保も含めたリスク管理が重要です。
👉次回予告:【第6回】許可が下りたらやるべき“開業準備”とは?
– 点呼・記録簿・運送約款…すぐに営業できないワケを解説します。