一般貨物自動車運送事業における許可申請と行政書士の役割
1. 許可制度の概要
一般貨物自動車運送事業を営むためには、道路運送法第4条に基づく国土交通大臣の許可を受ける必要があります。
許可要件は大きく分けて以下の4つです。
- 資金要件:事業開始に必要な自己資金を備えていること
- 人員要件:運行管理者・整備管理者など法定の人員を確保していること
- 車庫要件:都市計画法や建築基準法に適合する車庫を確保していること
- 車両要件:適切な台数・車種の車両を使用できること
加えて、許可申請後には役員法令試験に合格する必要があります。
2. 許可申請で求められる実務
許可申請にあたっては、次のような多岐にわたる作業が必要です。
- 登記簿謄本・納税証明書・残高証明書などの証明書類の収集
- 車庫配置図、平面図、周辺道路見取図等の作成
- 運送事業計画書・資金計画書等の作成
- 運輸局窓口での質疑応答や補正指示への対応
これらは法律知識に加え、測量・図面作成や財務的な書類整備も求められるため、申請者本人だけで対応するのは相当な負担となります。
3. 行政書士の関与領域
行政書士は、次の領域で事業者を支援することが可能です。
- 許可要件の事前診断(資金・車両・人員・車庫)
- 各種証明書類の取得代行
- 車庫図面・申請書類一式の作成
- 運輸局との折衝、補正対応
- 役員法令試験の事前対策(模擬問題・重要ポイント指導)
- 許可取得後の「運輸開始届」作成・提出
これにより、事業者は本業に集中しながら円滑に許可取得を目指すことができます。
4. 報酬水準について
令和2年度の行政書士会報酬統計によれば、一般貨物自動車運送事業経営許可申請の平均報酬額は約45万円、最頻値は40万円でした。
実務的には、書類作成のみなら30〜40万円台、フルサポートでは50〜70万円台が多く見られます。
報酬額は「どこまでを依頼するか」によって変動するため、事業者はサポート範囲と費用のバランスを確認することが重要です。
5. まとめ
一般貨物自動車運送事業の許可申請は、単なる書類提出にとどまらず、要件調査・証明書収集・図面作成・試験対策など、多面的な準備を要します。
行政書士に依頼することで、これらを一括して支援してもらうことができ、許可取得までの確実性と効率性が高まります。
事業開始を目指す事業者にとって、**「どこまでを専門家に委託し、どこを自分で対応するか」**を早い段階で検討することが、スムーズな開業の第一歩となるでしょう。