障害福祉サービス事業の「指定取消し」「効力停止」「辞退届」
~行政処分と自主廃止の違いを行政書士が解説~
はじめに
障害福祉サービス事業を運営していると、監査・実地指導・報告徴収など、行政とのやり取りは避けて通れません。特に運営体制の不備や人員基準の違反が見つかった場合、**「指定取消し」「効力停止」「指定辞退」**といったキーワードが突然現実のものとなります。
これらの言葉は似ているようで、事業の存続や将来の再申請に大きな差をもたらします。本記事では、行政書士の視点からそれぞれの違いを整理し、事業所にとって最も適切な選択肢を検討するための指針を示します。
1. 「指定取消し」とは?
法的根拠
障害者総合支援法 第50条
- 不正の手段による指定取得
- 法令違反や命令違反
- 業務運営の著しい不適正
こうした場合、都道府県知事等は**「指定取消し」**を行うことができます。
特徴
- 事業所は以後サービスを提供できなくなる。
- 欠格期間(5年間)が生じ、同一法人で再申請ができない。
- 法人としての信用失墜が避けられない。
つまり、取消しは「事業継続不能」に直結する最も重い処分です。
2. 「効力停止(業務停止命令)」とは?
法的根拠
同じく障害者総合支援法第50条に基づき、取消しに至らない場合に命じられるのが「業務停止命令」です。
特徴
- 停止期間は 1か月〜6か月程度が一般的。
- 停止期間が明ければ再開は可能。
- ただし、再開前に改善計画書の提出・監査が行われるのが通例。
「効力停止」は、利用者・職員にとっても打撃が大きい処分です。停止期間中は新規受入れはできず、既存利用者のサービスも代替提供が求められる場合があります。
3. 「指定辞退」とは?
法的根拠
障害者総合支援法施行規則 第39条
事業者自らが「辞退届」を提出し、指定を返上する仕組みです。
特徴
- 行政処分ではないため、欠格事由が残らない。
- 将来の再指定申請も可能。
- 通常、辞退希望日の1か月前までに届出が必要。
「辞退届」は事業戦略上の撤退や法人再編時にも用いられます。
4. 弁明手続きと改善計画
弁明の機会(聴聞手続)
取消しや停止処分を下す前に、行政は必ず「弁明の機会」を与えなければなりません。
- 弁明書提出
- 聴聞での口頭意見陳述
- 参考人の出頭
これらを通じて、処分が妥当かどうか再検討されます。
改善計画書
効力停止や改善命令の場合には、改善計画書の提出が必須です。
- 人員配置基準の遵守方法
- 職員研修計画
- 業務運営改善の具体策
- 再発防止体制の構築
行政は「改善の意欲と実効性」を重視します。
5. 実務上の違いまとめ
区分 | 法的根拠 | 再指定の可否 | 実務的な重さ |
---|---|---|---|
指定取消し | 総合支援法50条 | 5年間不可 | 最重処分 |
効力停止 | 総合支援法50条 | 可 | 中程度。再開には改善必須 |
指定辞退 | 施行規則39条 | 将来可 | 自主撤退。欠格なし |
6. 行政書士ができるサポート
行政処分や辞退届の対応は、法律・通知・条例の知識だけではなく、実務的な交渉力と書類作成力が問われます。
行政書士法人檀上事務所では、以下のサポートを提供しています。
- 弁明書・改善計画書の作成支援
- 聴聞手続における参考人対応・想定問答の準備
- 辞退届・事情説明書の代理作成
- 監査・実地指導対策(書類整備・規程見直し)
- 行政との調整・スケジュール管理
「取消し回避」「効力停止の短縮」「信頼回復に向けた改善」のいずれにおいても、第三者専門家の視点が重要です。
まとめ
障害福祉サービス事業所にとって、「指定取消し」「効力停止」「辞退届」は大きな岐路となります。
- 取消しは法人存続に直結する最重処分
- 効力停止は改善のチャンスだが利用者・職員への影響大
- 辞退届は自主撤退の柔軟な手段
どの局面でも、早期の対応と専門的な文書作成が鍵となります。
もし「行政処分が迫っている」「弁明書をどう書けばいいかわからない」「辞退届を出すべきか迷っている」といったお悩みがあれば、ぜひ行政書士にご相談ください。