簡易宿所営業と旅館・ホテル営業の違い~構造設備基準の比較~とイニシャルコスト試算

簡易宿所営業と旅館・ホテル営業の違い~構造設備基準の比較~

はじめに

民泊サービスや宿泊施設を運営する際には、旅館業法に基づいた許可が必要です。旅館業法では、宿泊施設を「簡易宿所営業」と「旅館・ホテル営業」の2つに分類しています。それぞれの営業形態によって、求められる構造設備基準が異なります。本記事では、その違いについて詳しく解説します。

旅館業の種類と構造設備基準

まず、旅館業法に基づく宿泊施設の営業形態について確認しましょう。

  • 簡易宿所営業: 宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業形態です。
  • 旅館・ホテル営業: 宿泊施設を設け、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業形態です。

構造設備基準の比較

次に、簡易宿所営業と旅館・ホテル営業に求められる構造設備基準の違いを、表形式で比較してみましょう。

項目 簡易宿所営業 旅館・ホテル営業
客室床面積 延床面積33㎡以上(宿泊者が10人未満の場合は宿泊者数×3.3㎡以上) 7㎡以上/室(寝台がある場合は9㎡以上/室)
玄関帳場(フロント) 規制なし(※) 宿泊しようとする者との面接に適する玄関帳場または玄関帳場代替設備を有すること
入浴設備 近接する公衆浴場がない場合、宿泊者の需要を満たす規模の入浴設備を有すること 同左
換気等 適当な換気、採光、照明、防湿及び排水の設備を有すること 同左
その他 都道府県(保健所を設置する市、特別区)が条例で定める基準に適合すること 同左

※一部の自治体では、フロントの設置が義務付けられている場合がありますので、事前に確認が必要です。

簡易宿所営業の構造設備基準緩和について

平成28年4月、衛生水準の確保が可能な範囲内で、簡易宿所営業の許可基準が緩和されました。これにより、従来よりも簡単に許可を取得できるようになっています。

規制緩和の具体例:

  • 客室の延床面積: 従来の33㎡以上の基準が緩和され、一度に宿泊させる人数が10人未満の場合は、宿泊者数×3.3㎡以上であれば許可が得られるようになりました。

ただし、この規制緩和によって、許可を受けずに民泊サービスを提供できるわけではありません。許可取得は引き続き必要です。

まとめ

宿泊施設を運営する際、簡易宿所営業と旅館・ホテル営業のいずれかの営業形態を選ぶことで、施設の運営形態に応じた構造設備基準を満たすことが求められます。それぞれの基準をしっかり理解し、適切な手続きを行うことで、安全で合法的な運営を目指しましょう。

このブログ記事が、宿泊施設運営を検討している方々にとって有益な情報となることを願っています。施設の種類に応じて、適切な基準を満たすように準備を進めましょう。

簡易宿所営業のイニシャルコストを試算するにあたり、基本的な要素と必要な設備を考慮します。以下の試算は、一般的な簡易宿所営業施設(10名程度が宿泊可能)を想定しています。

1. 物件の準備

  • 家具・家電の購入: ¥500,000 ~ ¥1,200,000
    • ベッド、ソファ、テーブル、家電(冷蔵庫、電子レンジ、エアコンなど)の購入費用。
  • インテリア・装飾品: ¥100,000 ~ ¥300,000
    • カーテン、照明、装飾品などの費用。

2. 法的手続き・許可取得

  • 簡易宿所営業許可申請: ¥0 ~ ¥50,000
    • 自治体への許可申請手数料。地域によって異なります。
  • 防火・消防設備の設置: ¥100,000 ~ ¥500,000
    • 自動火災報知設備、消火器、非常用照明、誘導灯などの設置費用。
    • 特定小規模施設用自動火災報知設備であれば、無線式で配線工事が不要となり、費用を抑えられます。
  • 保険料(簡易宿所専用保険): ¥50,000 ~ ¥150,000
    • 火災保険、損害保険、宿泊施設専用の責任保険など。

3. 物件改装・設備

  • リフォーム費用: ¥200,000 ~ ¥700,000
    • 内装のリフォーム(壁紙の張替え、床材の交換、簡単な設備工事など)。
  • 入浴設備の設置: ¥100,000 ~ ¥500,000
    • 近接する公衆浴場がない場合、宿泊者の需要を満たす入浴設備を設置する費用。
  • インターネット回線設置: ¥10,000 ~ ¥30,000
    • Wi-Fiルーターの設置、インターネットプロバイダー契約費用。

4. マーケティング・プロモーション

  • ウェブサイト作成: ¥50,000 ~ ¥300,000
    • 自社ウェブサイトの制作費用、または宿泊予約サイトへの掲載費用。
  • プロモーション費用: ¥50,000 ~ ¥150,000
    • 広告、SNS、SEO対策などの費用。

5. その他の費用

  • ライセンス契約費用: ¥20,000 ~ ¥100,000
    • プロパティマネジメントシステム(PMS)やチャンネルマネージャーの導入費用。
  • 初期在庫費用: ¥20,000 ~ ¥50,000
    • リネン、タオル、シャンプー、トイレットペーパーなどの備品。

総合試算

項目 コスト(円)
物件の準備 ¥600,000 ~ ¥1,500,000
法的手続き・許可取得 ¥150,000 ~ ¥700,000
物件改装・設備 ¥310,000 ~ ¥1,230,000
マーケティング・プロモーション ¥100,000 ~ ¥450,000
その他の費用 ¥40,000 ~ ¥150,000

合計: ¥1,200,000¥4,030,000

まとめ

  • 簡易宿所営業は、旅館・ホテル営業と比べると許可取得や設備設置に関する規制が比較的緩和されているため、イニシャルコストを抑えることができます。
  • ただし、物件の立地や規模、設備の選定によって、必要なコストは大きく変動します。
  • 設備やリフォーム費用を抑えながらも、必要な法的要件を満たすことが重要です。

この試算は標準的なものであり、具体的な物件や地域の条件に応じてコストは変動する可能性があります。

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