集合住宅で家主不在型の民泊施設における消防設備の要件
1. 自動火災報知設備の設置
- 自動火災報知設備: 民泊物件には自動火災報知設備の設置が原則必要です。ただし、以下の条件を満たす場合は「特定小規模施設用自動火災報知設備」に代えることができます。
- 建物の延べ面積が300㎡未満(原則2階建て以下)
- 建物の延べ面積が300㎡以上500㎡未満で、民泊部分の面積が建物全体の10%以下、もしくは10%を超えた場合でも300㎡未満(原則2階建て以下)
例:
- 延べ面積300㎡は1Rが6部屋程度のアパートに相当。
- 延べ面積500㎡は1Rが10部屋程度のアパートに相当。
ただし、無線式の特定小規模施設用自動火災報知設備を設置した場合でも、建物の建材や大きさによって無線が届かない場合、有線の自動火災報知設備に変更する必要があります。
2. 誘導灯の設置
- 誘導灯の設置: 一戸建て住宅と同様に、ゲストが速やかに屋外まで避難できるよう、以下の誘導灯の設置が必要です。
- 避難口誘導灯: 民泊物件の出入り口に設置。
- 階段通路誘導灯: 共有部分の階段やスロープに設置。
- 通路誘導灯: 共有部分の廊下や階段、通路に設置。
設置免除の条件:
- 民泊物件の面積が100㎡以下。
- 民泊物件の廊下に非常用照明装置か、各宿泊室に携帯用照明器具がある。
- 宿泊室からすぐに外や玄関に通じる廊下に出られる。
3. 防炎物品の使用
- 防炎物品: 一戸建て住宅と同様に、カーテンやじゅうたんは防炎性能のある商品を使用する必要があります。
4. スプリンクラーの設置
- スプリンクラー設置要件:
- 11階以上のフロアで民泊を行う場合、または延べ面積が6,000㎡以上の物件では、スプリンクラーの設置が義務付けられます。
スプリンクラーの設置には、消火水槽の設置や天井の配管工事が必要で、設置費用は物件によっては何千万円にも達する可能性があります。そのため、スプリンクラーが既に設置されている物件でなければ、10階以下の物件を選ぶことが推奨されます。
結論
集合住宅で家主不在型の民泊施設を運営する場合、建物全体の面積や民泊として利用する部分の割合によって、必要な消防設備や設置費用が大きく変わります。また、スプリンクラーや自動火災報知設備の設置が求められる場合は、非常に高額なイニシャルコストが発生する可能性があります。
これらの要件を踏まえ、消防法令に適合するための設備設置には十分な準備とコスト見積もりが必要です。
集合住宅で家主不在型の民泊施設におけるイニシャルコストを、消防設備や法的要件を考慮しながら試算します。
1. 物件の準備
- 家具・家電の購入: ¥500,000 ~ ¥1,500,000
- ベッド、ソファ、テーブル、家電(冷蔵庫、電子レンジ、エアコンなど)の購入費用。
- インテリア・装飾品: ¥100,000 ~ ¥300,000
- カーテン、照明、装飾品などの費用。
2. 法的手続き・許可取得
- 住宅宿泊事業届出: ¥0 ~ ¥30,000
- 自治体への届出手数料。
- 自動火災報知設備の設置:
- 特定小規模施設用(300㎡未満または条件を満たす場合): ¥15,000 ~ ¥45,000
- 有線の自動火災報知設備(無線が届かない場合や設置が必要な場合): ¥1,000,000
- 誘導灯の設置: ¥50,000 ~ ¥100,000
- 避難口誘導灯、階段通路誘導灯、通路誘導灯の設置費用と工事費用。
- 防炎物品の購入: ¥50,000 ~ ¥150,000
- 防炎カーテン、防炎じゅうたんなどの購入費用。
- スプリンクラーの設置:
- 設置が必要な場合: ¥数百万円以上(一般的には設置不要な10階以下の物件を選ぶことで回避)。
- 消火器の設置: ¥3,000 ~ ¥10,000
- 業務用消火器の購入費用。
- 保険料(民泊専用保険): ¥50,000 ~ ¥150,000
- 火災保険、損害保険、民泊専用の責任保険など。
3. 物件改装・設備
- リフォーム費用: ¥200,000 ~ ¥500,000
- 内装のリフォーム(壁紙の張替え、床材の交換など)。
- インターネット回線設置: ¥10,000 ~ ¥30,000
- Wi-Fiルーターの設置、インターネットプロバイダー契約費用。
4. マーケティング・プロモーション
- ウェブサイト作成: ¥50,000 ~ ¥300,000
- 自社ウェブサイトの制作費用、または宿泊予約サイトへの掲載費用。
- プロモーション費用: ¥50,000 ~ ¥150,000
- 広告、SNS、SEO対策などの費用。
5. その他の費用
- ライセンス契約費用: ¥20,000 ~ ¥100,000
- プロパティマネジメントシステム(PMS)やチャンネルマネージャーの導入費用。
- 初期在庫費用: ¥20,000 ~ ¥50,000
- リネン、タオル、シャンプー、トイレットペーパーなどの備品。
総合試算
項目 | コスト(円) |
---|---|
物件の準備 | ¥600,000 ~ ¥1,800,000 |
法的手続き・許可取得 | ¥218,000 ~ ¥1,335,000 |
物件改装・設備 | ¥210,000 ~ ¥530,000 |
マーケティング・プロモーション | ¥100,000 ~ ¥450,000 |
その他の費用 | ¥40,000 ~ ¥150,000 |
合計: ¥1,168,000 ~ ¥4,265,000
まとめ
- 集合住宅で家主不在型の民泊施設では、特に消防設備(自動火災報知設備、誘導灯、スプリンクラー)にかかるコストが大きくなりがちです。
- スプリンクラーの設置は非常に高額になるため、設置が不要な10階以下の物件を選ぶことでコストを大幅に抑えることが可能です。
- 自動火災報知設備の種類によっても費用が大きく異なるため、物件の規模や構造に合わせた設備を選定することが重要です。
この試算は標準的なものであり、具体的な物件の条件や地域によってコストは変動する可能性があります。