民泊と消防法 ― 2㎡以上の収納室に必要な「熱感知器」について
近年、民泊事業はインバウンド需要の回復も相まって再び注目を集めています。
しかし、事業者にとって避けて通れないのが 消防法に基づく安全対策。とりわけ「特定小規模施設用自動火災報知設備(特小自火報)」の設置要件については、民泊許可・届出の審査に直結するため注意が必要です。
🔹 特定小規模施設と消防法の枠組み
「特定小規模施設」とは、延べ面積300㎡未満など比較的小規模な宿泊施設を対象とするカテゴリーで、
- 特定小規模施設用自動火災報知設備(特小自火報)
- 簡易スプリンクラー設備
など、従来の大規模ホテル・旅館向け設備を簡略化した消防設備の設置が認められています。
その法的根拠となるのが、
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)
- 特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成16年総務省令第37号)
- 消防庁告示第25号(平成20年)
です。
🔹 なぜ「2㎡以上の収納室」に熱感知器が必要なのか
省令や告示の規定を受けて、各消防本部の「審査基準」においては次のように整理されています。
- 居室 → 感知器設置必須
- 収納室(2㎡以上) → 感知器設置必須(多くの場合は熱感知器)
つまり、民泊物件内にある 2㎡以上の納戸・押入れ・収納スペースは、火災の初期段階で煙や熱がこもりやすいため、感知器を設ける必要があるのです。
特に収納室は布団や生活用品を置くことが多く、可燃物が集中する傾向があります。そのため、火災拡大を未然に防ぐ意味でも設置が義務付けられていると解釈できます。
🔹 実務上のポイント
- 感知器の種類
→ 誤報防止のため、収納室には熱感知器を設置するのが一般的。 - 消防署との協議
→ 所轄消防署の「運用基準」に基づいて判断されるため、事前協議が不可欠。 - 無窓階判定との関係
→ 窓の仕様や位置にかかわらず「無窓階」と判定されるケースがあり、その場合は避難案内図・携帯電灯の設置指導を受けることがあります。
🔹 民泊事業者へのメッセージ
民泊開業において「収益性」に目が行きがちですが、消防法対応は事業継続の大前提です。
収納室という一見小さな空間であっても、2㎡を超えるだけで感知器の有無が審査結果に直結します。
- 許可をスムーズに取得するために
- 安全な運営を確保するために
ぜひ設計段階から消防署や専門家(行政書士・消防設備士)と連携し、適切な対応を進めることをおすすめします。
✍️ まとめ
民泊事業においては、「2㎡以上の収納室には熱感知器」という一見細かいルールが、許可の成否や安全性に直結します。
根拠法令を押さえつつ、所轄消防署との事前協議を怠らないことが、安心・確実な事業運営につながります。