【第1回】旅館業許可とは?民泊との違いを行政書士が徹底解説
はじめに
近年、インバウンド回復や地方観光の再評価により、宿泊事業への参入を検討する方が増えています。
その際に必ず直面するのが、
「民泊でいいのか? それとも旅館業許可を取るべきか?」
という判断です。
本シリーズでは、旅館業許可(特に簡易宿所)を中心に、申請実務を行政書士の視点で解説します。
第1回は、まず旅館業許可とは何か/民泊との決定的な違いから整理します。
1.旅館業許可とは何か
旅館業許可とは、旅館業法に基づき宿泊料を受けて人を宿泊させる営業を行うために必要な許可です。
旅館業は、次の4区分に分かれます。
- 旅館・ホテル営業
- 簡易宿所営業
- 下宿営業
- (※現在はほぼ使われない旧区分)
実務上、小規模・空き家活用・無人運営などで最も多く選ばれるのが
👉 簡易宿所営業です。
2.民泊(住宅宿泊事業)との決定的な違い
「民泊」と呼ばれるものの多くは、住宅宿泊事業法に基づく届出型の事業です。
両者の違いを、実務目線で比較すると次のとおりです。
| 項目 | 旅館業(簡易宿所) | 民泊 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 旅館業法 | 住宅宿泊事業法 |
| 手続 | 許可 | 届出 |
| 年間営業日数 | 制限なし | 180日以内 |
| 消防・設備 | 厳格 | 比較的緩やか |
| 信用性 | 高い | 低く見られる場合あり |
| 銀行・融資 | 通りやすい | 慎重 |
特に重要なのは、営業日数制限の有無です。
年間180日制限がある民泊では、
- 安定収益が出にくい
- 融資・事業計画で不利
という問題が生じます。
3.なぜ今「旅館業許可」を選ぶ人が増えているのか
近年、次の理由からあえて旅館業許可を選ぶ事業者が増えています。
- ✅ 年間を通して営業できる
- ✅ OTA(Booking.com等)での扱いが有利
- ✅ 行政・近隣からの説明がしやすい
- ✅ 将来の売却・事業承継に強い
特に、**地方都市・観光地(尾道など)では「簡易宿所×無人運営」**が主流になりつつあります。
4.「簡易宿所」は実は“簡単”ではない
名称から「簡易」と思われがちですが、実務は決して簡単ではありません。
- 用途地域・建築基準法の確認
- 消防署との事前協議
- 保健所の構造設備基準
- 図面と現況の一致
- 帳場(フロント)要件の整理
これらのどれか1つでも欠けると、申請は止まります。
実際に多いのが、
「工事が終わってから相談に来たが、帳場要件を満たせない」
「消防設備が追加で数百万円かかった」
といったケースです。
5.行政書士が関与する意味
旅館業許可は、**書類作成だけではなく「行政との調整業務」**が中心になります。
行政書士が関与することで、
- 事前相談でNG要素を早期に洗い出す
- 消防・建築・保健所を横断的に整理
- 図面・説明資料を行政向けに最適化
- 差戻し・是正を最小限に抑える
といった効果があります。
まとめ|第1回のポイント
- 旅館業許可は「自由に営業できる」強い制度
- 民泊との最大の違いは180日制限の有無
- 簡易宿所は実務上のハードルが高い
- 申請前の段階で9割が決まる
次回予告
第2回|旅館業の区分(旅館・ホテル・簡易宿所・下宿)どれを選ぶ?
→ 失敗しない営業区分の選び方を、実例ベースで解説します。
📌 行政書士法人檀上事務所では、旅館業許可(特に簡易宿所)について、物件調査段階からのご相談を承っています。
「まだ物件が決まっていない」段階でも、お気軽にご相談ください。
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