会社設立と同時に始める資金調達戦略|創業期を成功に導く実践ガイド
- 序論:なぜ会社設立と資金調達は一体で考えるべきか
- 資金調達の主要手段と設立直後に使えるスキーム
- 自己資金
- 融資(公的制度/政府系・民間)
- 補助金・助成金
- 出資・エクイティファイナンス
- その他(リース・ファクタリング・クラウドファンディング)
- 会社設立時の資金調達で押さえるべきチェックポイント
- 事業計画・資金使途の明確化
- 自己資本比率・バランスシート観点
- 信用力・代表者・保証・担保の準備
- 資金調達タイミング(設立前?設立直後?)
- ケース別:よくある設立パターン別資金調達モデル
- 小規模サービス業(低設備投資)
- 訪問介護・障害福祉サービス(設備・人件費重視)
- 成長型ベンチャー型(出資・スケール重視)
- 行政書士として押さえて起こしたい実務ポイント
- 設立登記書類・資金調達スキームの整合性
- 資金調達時の契約・検討書面(借入契約・出資契約)
- クライアントに対するヒアリング事項
- 事業計画書・収支計画書のポイント
- まとめ:設立+資金調達のシームレスな流れを構築しよう
序論:なぜ「会社設立=資金調達」の視点が重要か
会社を設立するということは、新しい事業活動を法人という枠組みでスタートさせるということですが、その直後に待ち受けているのは「資金の調達」と「資金の使途の明確化」です。設立時に資本金をいくらにするか、どこから資金をまかなうか、どのように事業運営を回していくか—これらは切り離して考えると、後々「資金繰りの悪化」「思わぬ借入がかさむ」「株主構成の歪み」などのリスクを産みやすくなります。
特に、法人設立を契機に事業拡大や補助金申請、成長戦略を描こうとする場合、資金調達の手段・タイミング・返済・希薄化(出資の場合)を設立段階から設計しておくことが重要です。
資金調達の主要手段と設立直後に使えるスキーム
自己資金
設立時には、経営者自身がまず「どれだけの自己資金を投入できるか」が金融機関・出資者にとっての信頼材料となります。実際、創業期の場合は「自己資金の割合」が最も多く使われている手段です。
「自己資金をこれだけ入れている」ということは、経営者自身がリスクを取っているという証左となり、外部からの融資や出資の交渉を有利にします。特に法人設立直後は事業実績がゼロであるため、自己資金の存在が“信用力”の補完的な役割を果たします。
融資(公的制度/政府系・民間)
設立直後の資金調達手段としてもっともポピュラーなのが「融資」です。例えば、法人設立後すぐに活用できる制度融資や、代表者が個人保証を付ける場合などがあります。中小企業・創業期の資金調達については、「融資」「補助金」「出資」を組み合わせて使うことが重要とされています。
ただし、融資審査においては「返済可能性」「資金使途の明確さ」「代表者の信用状況」「担保・保証の有無」などが大きな影響を持ちます。設立段階でこれらを整理しておくことが実務的にも有効です。
補助金・助成金
返済不要、または返済義務のない資金として魅力的なのが補助金・助成金です。設備投資・IT導入・創業支援など、さまざまな制度が自治体・国で存在します。設立直後の事業者にとっては、初期費用軽減策として非常に価値があります。
ただし、補助金・助成金は「事前申請・採択」が必要であり、支給までに時間がかかるケースもあるため、資金繰りの観点からは「補助金に頼ってはいけないが、活用できれば強い」という理解が重要です。
出資・エクイティファイナンス
法人設立直後から「出資を受けてスケールを狙う」というケースも増えています。ベンチャー/成長型企業では、資本政策(株主構成・議決権・希薄化)と資金調達をセットで考えることが鍵です。
一方で、創業期で実績がない段階では出資を受けるのが難しいというデータもあります。 そのため、設立直後には「融資+補助金+自己資金」で土台をつくり、ある程度実績が出てから出資を検討するという流れが現実的です。
その他(リース・ファクタリング・クラウドファンディング)
設備を導入する際にリースを利用する、売掛債権をファクタリングで早期現金化する、あるいはクラウドファンディングでプレマーケットをつくるという手段も忘れてはいけません。リース・ファクタリングは実務的には“資金調達”というより“資金化・キャッシュフロー改善”の手段ですが、設立時の資金管理においても有効です。
クラウドファンディングについても、最近ではオンラインを活用して資金+マーケット検証を同時に行うケースが出てきています。
会社設立時の資金調達で押さえるべきチェックポイント
- 事業計画・資金使途の明確化:どれだけの設備投資、人件費、運転資金をいつどれだけ投入するかを見通すことが、融資・出資・補助金すべてに共通の重要要件です。
- 自己資本比率・バランスシート観点:過剰な借入は返済負担を重くし、将来の資金調達・信用力を浮き彫りにします。質の高い資金調達設計では、借入(負債)と出資(資本)のバランスを考える必要があります。
- 信用力・代表者・保証・担保の準備:創業期は実績がないため、代表者の信用情報・資金提供者(親族・知人)・担保提供の可否などが審査時の鍵となります。
- 資金調達タイミング(設立前?設立直後?):会社設立登記前に準備を進めておくべき事項が多く、登記後すぐに資金流入できる体制を整えておくことが望ましいです。
ケース別:設立パターン別資金調達モデル(例)
(1)小規模サービス業(例:コンサルティング、オンラインサービス)
- 設立時資本金:100万円~300万円
- 資金調達スキーム:自己資金+補助金(IT導入等)+運転資金借入
- ポイント:設備投資少、人的リソース中心なので運転資金確保が鍵
(2)訪問介護・障害福祉サービス(人件費+設備投資あり)
- 設立時資本金:300万円~500万円+設備投資100万円+初期人件費20万円×数名
- 資金調達スキーム:自己資金+制度融資(無担保・無保証人利用可の創業融資)+補助金+開設前の契約先確保
- ポイント:開設タイミングまでの資金(待機資金)を見込んだ運転資金設計が重要
(3)成長型ベンチャー(スケール志向)
- 設立時資本金:500万円~1000万円+シード出資検討
- 資金調達スキーム:自己資金+エンジェル出資+VC出資+公的補助金+ファクタリング/リース
- ポイント:資本政策(株主構成、希薄化、入口・出口戦略)を早期に策定することが経営の自由を保つ鍵です。 (CIO)
行政書士として押さえて起こしたい実務ポイント
- 設立登記の定款・出資払込証明・役員就任承諾書などと、資金調達の計画書(事業計画書・収支計画書)を整合させておく。
- 借入契約・出資契約を締結する際には、契約書の条項(返済条件/議決権/転換条項など)を整理し、クライアントにリスク説明ができるように。
- クライアントヒアリング時には「いつ設立登記を行うか」「どれだけの資金がいつまでに必要か」「返済可能なキャッシュフローをどう確保するか」等をチェック。
- 事業計画書・収支計画書において、設立直後から3年程度までの資金使途・収益見通し・返済計画を明示することが、金融機関・出資者評価のポイントになります。
まとめ:設立+資金調達のシームレスな流れを構築しよう
会社を設立するという一連の流れと、資金をどう調達し、どう使い、どう返して/どう成長させるか、という流れは別ではなく一体で設計することが成功への鍵です。特に、設立直後の“勝ちパターン”を描いておくことで、資金繰りの不安を低減させ、成長の芽を確実に育てることができます。
行政書士として、また資金調達支援のプロフェッショナルとして、設立を検討されるクライアントに対して「設立手続+資金調達スキーム」のワンストップ提案を実現することで、他の支援者との差別化、そして信頼構築に繋がるでしょう。





